独占連載コラム/嶋田智之の『人生はペペロンチーノ』【Vol.5】

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こちらで連載している人気コラム
〝独占連載コラム/嶋田智之の『人生はペペロンチーノ』〟
でローマラリーに同行してくださった嶋田智之氏がレポートしてくれました。

とても面白いので
カエルナラ イタリアさんにご了解をいただき
転載いたします。

 

Vol.5 ローマ・ラリー・レポート、いきなりの番外編 その1

9月の15日から17日にかけてイタリアのローマで行われた“ラリー・ディ・ローマ・カピターレ”、通称ローマ・ラリーで、日本のmCrt(ムゼオ・チンクエチェント・レーシング・チーム)と眞貝知志選手が優勝したことを、御存知の方も少なくないだろう。オーバーオールじゃなくてRC3クラスでのクラス優勝だけど、ライバル達と較べて最もパワーが小さく最もシャシーの古い7年も前のアバルト500ラリーR3Tを走らせ、SSふたつでクラスのトップ・タイムを叩き出しながらの優勝というのは、素晴らしい結果である。しかも眞貝選手はヨーロッパでのラリーへの参戦はこれが2年目、わずか3戦目での優勝だ。快挙といってもいいと思う。

何せローマ・ラリーは、“ローマ”といえども市内で行われるのはスタジアム形式のスーパーSSぐらいなもので、実際にはローマのあるラツィオ州の変化に富んだ地形を舞台に行われ、一番上の写真のような山岳地帯もあれば……、

 

この写真のように郊外の町や村を全開で駆け抜けるコースもあって、現地のプロフェッショナル達にすら「イタリアで行われるターマック(舗装路)のラリーでは最も難しい」といわれるほど。その走行環境やアベレージ・スピードの高さは日本のラリーには全くない領域のモノだから、日本のトップ・ドライバーが挑戦したからといってポンと勝たせてもらえるものじゃない。走行環境に自分の感覚やドライビングをアジャストさせるのすら大変なのである。

 

眞貝選手も競技中はかなりナーバスな表情を浮かべていることが多く、本人曰く「ぜんぜんダメ。自分らしい走りが全くできてない。こんなにヘタクソだったかなぁ……って悩んじゃうくらいです」と、ポロリとこぼすぐらいだったのだ。でも……、

 

勝った! それもしっかりとドラマティックな展開を見せてくれて、そのうえで勝ったのだ。その展開を読めてなかったmCrtの伊藤オーナーとコーディネーターのアンドレアさん、それに僕の3人は、最終SSがスタートする前にクルマが戻ってくるサービス・パークを出発し、最後のセレモニーが行われる数十キロ先の海沿いの街へと向かいはじめちゃっていて、その車中で勝ったことを知ったぐらい。なので、途中のサービスエリアに立ち寄って、

 

エスプレッソで祝杯をあげた。……嬉しそうでしょ?

そんなわけで本当はここでレポートと行きたいところなのだけど、すでに密着レポートをする雑誌は決まっている。それを押しやってここで詳細をレポートするような真似はできない。なので、ちゃんとしたラリーの密着レポートはそっちを楽しみに待っていただくことにして、ここではそっちでほとんど触れない舞台裏のレポートをしようと思う。本編ナシでいきなりの番外編、である。

さて……と。僕はイタリアには20回近く渡ってるのだが、全て仕事のための渡航で、観光らしい観光というものをしたことがなかった。旅行でイタリアを訪ねる多くの人が見たり経験したりすることができないモノやコトには色々と出逢っているけれど、逆に多くの人が見たり経験したりしてるモノやコトには縁がなかったのだった。

だから、観光地を歩くというのがとっても新鮮だった。

 

これはテヴェレ川。イタリアで3番目に長い川。その流れはめちゃめちゃ優雅で美しかった。滞在時間2分ぐらいだったけど。

 

かの有名な真実の口、だ。ホラばかり吹いて真実をあまり語らない男なので、手を食いちぎられると困るから中には入らず、表側からチラ見することができる隙間から写真だけ撮ってみた。滞在時間1分弱。

 

ヴァチカンに近いところにある、ローマの街並み。建物によっては築400年ほどなのだとか。めちゃめちゃ美しくて情緒があるのだよね。通りかかっただけだけど。だから滞在時間30秒。

 

そして、一度は訪ねてみたいと思ってたヴァチカン。ヴァチカン市国の入り口に立ち塞がる、彼らが有名なスイス衛兵だ。この立ち姿を見て欲しい。素晴らしく美しいのだ。彼らはこの姿のまま、ピクリとも動かない。蝋人形かと思うくらい微動だにしない。正面で同じポーズをとって試してみたが、30秒もたたずに重心が崩れて微妙にフラリとし、その瞬間に目が合ってだいぶ恥ずかしかった。きっと「あの馬鹿なにやってんだ?」と思っただろうな。次の瞬間にエースフランス航空から「あんたの乗る便は欠航だよ」とメイルが入ったので、振り替え便交渉のために速攻で空港に向かわなきゃならなくなった。滞在時間はそれでも最長で、30分弱。

まぁ……こんなもんである。観光するときゃ仕事のついでじゃなくてちゃんと観光しに来い、ってことだろう。

ただ、僕達は仕事で行ったわけだけど、皆さんは違う。ローマ・ラリーを観に行くことも組み込んだ観光スケジュールを作ることもできるし、観光に行くついでにローマ・ラリーを観ることだってできる。ローマ・ラリーはそういうシチュエーションで行われる、ということをお伝えしたかった。一挙両得なのである。

ちなみに今年は諸般あって開催されなかったが、昨年mCrtはチームと眞貝選手を応援するためのツアーを行っていて、それにはクルマ好きにはたまらないイタリア各地のミュージアムやアバルト本社の訪問、ローマ市内観光といった盛り沢山のメニューが組み込まれていた。おそらく来年は再び応援ツアーを開催することになると思うので、楽しみに待っていていただきたい。

で、話を元に戻すと、僕はテヴェレ川沿いの道や真実の口の真横といった“観光地を歩く”体験をすることができたのだけど、それは予期せぬ偶然。実際のところはローマ・ラリーのセレモニアル・スタートが行われるのが真実の口のごく近くにある広場で、そこに向かっていただけだったのだ。しかも、真実の口の横で立ち止まるよりも、その先の交差点で立ち止まっていた時間の方が長かった。

 

ローマ・ラリーの“ゼロ”カーが走ってきて、交差点で停まったからだ。ほとんどアホである。

競技車両が通過する少し前にコースを走り、「これからラリー・マシンがここを通りますよー」と周囲に知らせたり、走るコースに異常がないかをチェックしたりするのがゼロ・カーの役目。今回のローマ・ラリーでは、アルファロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェとアバルト124スパイダーの2台がゼロ・カーを務めていた。──なぜ2台? それはローマ・ラリーがERC、つまりヨーロッパ・ラリー選手権という国際格式の競技と、イタリアの国内選手権の2本立てで行われたからだ。mCrtと眞貝選手が走ったのは、ERCの方である。

……ってところで、異様に長くなりそうなので、番外編は“その2”に続く。今回の締めの写真は「眞貝選手を探せ!」。ちょっと判りにくいかなぁ……? ならば、もうちょっと判りやすいモノについても触れておこう。上の方の写真に収まってるmCrt+眞貝選手のアバルト500に『カエルナラ イタリア』の文字がたくさん刻まれてるの、判るかなぁ?

 

 

1964年生まれ。クルマ好きがクルマを楽しみ尽くすためのバイブル的自動車雑誌として知られる『Tipo』の編集長を長く務めて不動の地位を確立し、スーパーカー雑誌の『ROSSO』やフェラーリ専門誌『Scuderia』の総編集長を歴任した後に独立。クルマとヒトを柱に据え、2011年からフリーランスのライター、エディターとして活動を開始。自動車専門誌、一般誌、Webなどに寄稿するとともに、イベントなどではトークショーのゲストとして、クルマの楽しさを、ときにマニアックに、ときに解りやすく語る。走らせたことのある車種の多さでは自動車メディア業界でも屈指の存在であり、また欧州を中心とした海外取材の経験も豊富。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

 

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